ぼくたちのリメイク Ver.β 3 感想

木緒なち(著/)えれっと(イラスト)
〇あらすじ〇
茉平常務の策略を掻い潜るため、新たなゲームメーカーにて二つの企画を再始動させた恭也たち、元第13開発部。一癖ある社長、伊知川の下で、企画の立て直しから始めることに。プラチナ世代のメンバーも集結して少しずつでも着実に企画を進めていく恭也だったが、それを良しとする筈もない茉平、そしてサクシードソフト陣営も動き出す――。「もうすぐだ。もうすぐ……何もかもが消える。僕の手によって、消し去ってやる」錯綜する両陣営の思惑。企画の行く末は、そして最後に勝つのは――。

人の心に大なり小なりプラスに働いて生きる活力へと変えるような可能性がある娯楽

ゲームを作っていたいと、不動の気魂を直情的に確かに熱を込めて言い切る主人公の姿勢をみた。それだけ熱中できるもの、誰に対しても「これが好きなんです」と言ってのけるものがある人が纏うオーラは、ただルーチンワークをこなしている人とは違うと思った。

人間の足りない部分。いらないものだから愛している。
歯の浮くような言葉だ。

P270

主人公と常務を見ていると、好きを届けたい「熱」をもってゲーム作りをしている現場の主人公と、かつてゲーム作りしていたが経営する立場になって現場の「熱」を調整する「冷」をもった会社上層部の常務という冷熱の構図のようだ。「冷」は時に本巻のように冷酷な一面をみせてくる。常務が教育事業を進めているところをみると、より生産的なことにつながる需要ある事業に注力しているようだ。熱さと理論をもっていた常務は上を目指すにつれ、何かがあって今の考えになったのだろうか。そういう意味では1巻の時にみせてきたパフォーマンスのように上の立場から経営的な目で現場を調整するゲームへの愛憎を抱いた人物。
主人公が言った日常の娯楽の立ち位置。何人に求められる生活に必要不可欠なモノではなく、人によって無力か有力になる。しかし人の心に大なり小なりプラスに働いて生きる活力へと変えるような可能性がある娯楽。本人の受け止め方次第で変わる未知数の娯楽のパワーを改めて思い至ったのだった。

自分には何も生み出す力がないと、確か既刊で語っていたような主人公。共に同じ方向を向いてゲーム作りができる仲間に恵まれ、ゲームに救われて今度は誰かを救えるようなゲームを作る姿勢を貫いていく。ゲームへの熱情からどの立場に落ち着こうとも何かしらの形でゲームに寄与するんだろうか。

まさか納沙布岬という観光地が出てくるとは。リフレッシュで北海道に行って朝4時という時間帯に日本本土最東端「納沙布岬」で日の出を見ようとする人物がいた。納沙布岬から見る日の出や北方領土、何かと「端っこ」を制したいライダーがツーリングで赴くところとても有名。
写真は過去北海道ツーリングにて納沙布岬で撮った日の出と2回目北海道ツーで撮った到達の証

味わい深い物語を求める人に

硬派戦記「烙印の紋章」「レオ・アッティール伝」を手掛けてきたの著者の新シリーズ。

タイトルで想起される軽やかな筆致の物語ではない。
じんわり温まる小説や心揺さぶられる小説、熱い小説に読んでいれば幾度出会うことはあれど、はじめから最後まで味読ができた上で上記のどれかの小説たり得るものは、電撃文庫でデビューして20年活躍している杉原智則先生の小説が筆頭に挙げられる。面白いシーンで楽しませることも大事だけど小説の本質は、読ませる文章で深い没入感があり、味わい深く読める小説であると思う。物語を形作るのは文章だから。面白い上に味読ができれば、最高な小説に化ける。というのは杉原先生の本を手に取ってパラパラめくれば直感で全体的に文章がぎっしり詰まっていると分かる。とにかく読ませる文章と()のキャラの心の声によるテンポが堪らない。笑みをこぼしたり、ぐんぐんのめり込んだり、ドン!と考えさせられる心境に陥ったりと地の文の多さが魅力にしか映らない小説。会話の勢いでごまかさず、紛れもなく地の文で形作る物語で勝負している小説。
物語は、英雄の1人が災厄を阻止した平定後、敗戦国に立って目のあたりにした事実から自身の正義に問いかけ、悩み、虚飾に満ちた真実にメスを入れる物語。現地に立ってみて体感することは、真実は事実を曇らせるということ。読者の現代に通底するテーマがあり、現実に影響を及ぼす力があるライトノベル。
イラストレーターをかえた2年ぶりの続刊に、作品を追っていた多くの読者が歓声を上げた。

少しでも気になったら、1巻の熱いAmazonレビューの数々をご一読ください!
3巻は2年ぶりの続刊であるにもかかわらず1巻よりも星の数が多いのでファンの方々がどれだけ切望されていたか伝わってくるかのようです。著者はブログやTwitterをやっておらず宣伝は発売時の公式アナウンスだけなので多くの口コミが集まるのはうれしい限り。

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