第四大戦(1)感想

十文字青(著) 玲汰(イラスト)
〇あらすじ〇
人類は有史以前から人外勢力としのぎを削ってきた。遺跡や遺物、文献等々を詳細に分析すると、過去に世界規模の大戦が、少なくとも三度は行われたことが判明している。いずれの戦いにおいても、最終的に勝利を収めたのは僕たち人類だった。でも、人外が死に絶えたわけじゃない。西暦2020年、現在。ある人外は僕たちの社会に紛れ、隠れ潜み、またある人外は人類と共存しようとしている。そして、四度目の大戦を画策する人外も――これは、第四大戦を阻止すべく活動する僕たちと、引き起こそうと目論む者たち、その狭間でもがく者たちの、戦いと日常の記録だ。

自責の念を抱え、生き残り続ける少年の生路と心の荒波

小説投稿サイト「ノベリズム」の電子書籍化レーベル「ノベリズム文庫」の初月の刊行である十文字青先生の作品「第四大戦」 
電子書籍のみでありながら販売サイトはkindle、楽天、hontoの3つで電子派ライトノベル読みが多く利用しているかもしれないBOOK☆WALKERにはない。だが社会人であれば読みたい気持ちが本物なら何の障害にもならないだろう。

普段は紙で読んでいて今回は、物語以外で利用しているkindleで読んだ。
本作は「薔薇のマリア」や「灰と幻想のグリムガル」など長編を手掛けてきた先生の作品で、初っ端から人外によって残忍な手口で目の前で大切な人を失ってしまった少年が、かつての選択から自責の念を抱え、浄化班の一員として人外を駆除する戦いに身を投じる傍ら、大学合格を目指す気骨が感じられない浪人予備校生活を描く。
非常勤として勤める人外浄化班の1人だが出勤日数と待遇から果たしてどっちが本業なのか分からないが、そこは主人公も迷っていそうで、まるで今後の生き方の答えを探しているかのように班員と予備校生の生活を送っている。浄化班の活動は表沙汰にならないので主人公は裏と表の生活を送っているともいえるのか。

人外。鬼、人に化ける猫、グール、人狼、翼人、鬼など無差別に人を殺め、または怨念を抱いて人にあだなす様々な種族が出てきて、目撃情報は国レベルで消される人とみなされない人外たち。人に危害を加えていたが人に寄り添って共生の道を選んだ種族またはその一派がいて、人外といっても一括りに駆除対象とならないのが今後小難しい問題を抱えそうで気になる要素。表紙でいうと桃色が主人公と同じ班の人に化ける猫で、傘さしてるのが半吸血鬼の浄化班の協力者。意志疎通が可能な人外がいて、駆除することで駆除された側の身内から復讐の矛先を向けられることもある。

人外に大切な人を、周りの人達を失ってきた主人公が、駆除活動で半ば命令から逸脱して必要以上に痛めつけて人外を制圧(殺)してるところが印象的で、そういうやつこそ戦場で先に散ってゆく"死に急ぎ野郎"とはならず過去繰り返し自分だけが生き残ってきたことから生還者"The Survivor"と幾度自分に言い聞かせているところも印象的

(略)の頭は穴だらけになっていた。両足で踏みつぶすと、とてもいい具合に、まるで破裂するみたいに、録音して何度もリピート再生して聴きたくなるような音を立てて、見事に弾けた。

第8章 

人外は駆除しなければならないと思ってはいるが、快楽殺人の節がある主人公。
後半では大切だった人に情緒をこねくり回される狂乱の戦場があって、一人称で情緒垂れ流しが混じった文言があることが特徴の作者の筆致も相まって、登場人物の情をかき乱す展開で見物だった。

(略)こんな気持ちは間違っているLaaRuLyRaaLuRyRaaLuRyLaRuLyRaあたりまえだLaLaRuRyLaRuLaRyLa正しいわけがないのに、打ち消すことがどうしてもできないRuLaRyLaRaLaRa……

第26章

主人公は、恩人であり師でもある方から肉体的・精神的に合理的な戦いが可能な武術を叩きこまれてはいる。
それを戦場でどう発揮していくのか。加えて人間サイドは武術や現代の銃や刀を武器に人外と戦うので、超能力や魔法がない現代兵器での戦いを描く怪異バトルものとしても魅力だと思う。

惨い戦場だけでなく戦いから離れた私生活の方では、今後の乙野さんとの展開も楽しみ。彼女のいない自習室に意味はないと思ってしまうほどに乙野さんが気になっている主人公と、乙野さんとのストーリーを100万円近くで買った精霊ぬちこに部屋で語りかけるところも、今後も長文の語りをみせてくれるのか期待したい。浄化班の班長である童顔甘声年齢不詳の龍ヶ迫つぼみからの着信に舌打ちし、乙野さんからの連絡に心浮き立って対面ではしどろもどろになる主人公の戦いと日常の物語を今後も読んでいきたい。

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