機龍警察 未亡旅団 感想

月村 了衛(著/文) 2014/1
〇あらすじ〇
由起谷警部補が街で出会った子供は、チェチェン共和国から侵入してきた女性だけのテロリスト集団、『黒い未亡人』の一員だった……。

凄絶な背景をもった子ども爆弾を有するテロ組織と戦う

手紙最高だった。手紙がある展開に心が温かくなった。1人の警察官がカティアと正面きって真摯に向き合ったことが一つの結実の形となって文面から滲み出ている。龍機兵搭乗員元テロリストのラードナー警部の言葉も噛みしめて生きていくんだろうか。どっかの短編でも掌編でもいいから再会した話を読みたいなぁ。
これからも命を狙われ続ける立場である彼女の境遇に複雑だ。チェチェンの暴力の世界に起因を求めるのか、悪事だと分かっていながら加担したことに同情の余地もないのか。 女性テロリスト集団「黒い未亡人」の背景には本書の参考文献『チェチェン 廃墟に生きる戦争孤児たち』、『チェチェンの呪縛 紛争の深淵を読み解く』、『アッラーの花嫁たち なぜ「彼女」たちは"生きた爆弾"になったのか』など他の数冊も含めた裏社会的なテーマが反映されていて、エンタメ小説を読んでいながら対岸の火事ではない現実感があって毎巻印象がぐっと深い。その熱量たるや。そして紛争地域で発達した機甲兵装がこのシリーズの大きな兵力。

「思い出せ、仲間の顔を。おまえよりほんの少しだけ先に死んでいった仲間の顔を。そうだ、一つ残らず思い出してみろ。それがおまえたちのやってきた暴力だ」

P199


子ども相手に戦うことに歴戦の傭兵姿警部ですら思うところがある。機甲兵装は戦う相手の顔を見なくていいが、爆弾を抱えた子どもが乗っている機甲兵装だと分かっていると変わってくる。対してテロリストは必死だ。暴力しか知らない子どもは再び暴力の世界に戻ってしまう背景の語りは凄絶だった。大切な人を人質にされて服従せざるをえなかったり、硝煙と血臭の世界で生き抜く本能を前にして倫理観など働かず人を殺傷していくしかない世界。そしていきついた戦力が子ども爆弾。皮肉なことに守るはずだった命を兵器として使う。一度思いついて子どもであることを逆手にとった子ども爆弾が作戦成功に導いたとき、次の作戦でも使用してだんだんと見境がなくなっていく。子ども全員が大儀を抱えて喜んで爆弾となっているわけじゃない。テロリスト幹部の側近である子どものカティアが心に赤い釘をたくさん刺したまま決死の覚悟で悲痛を抱えて立ち向かう姿に憐憫と熱い思い、今後も生き抜いてほしい願いが交じって心動された感じ。機甲兵装自身が爆弾となってつっこんでくるテロリスト相手とやりあう龍機兵と、テロリスト幹部と戦う搭乗員の活躍、最後の愛憎が絡むボスとの戦いと盛りだくさんだった。数々の背景と愛憎、心に訴える一人の警察官と機甲兵装、対人戦闘と一貫する緊迫感が読み入る雰囲気を作り出す機龍警察小説だった。

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