プロペラオペラ4 感想

犬村 小六(著)雫綺 一生(イラスト) 2021/5
〇あらすじ〇
極東の島国・日之雄。その皇家第一王女・銀髪の美少女イザヤは21才。同い年で幼なじみのクロトは、10才の時にイザヤにとんでもない“狼藉”をはたらき皇籍剥奪された曰く付き。しかしふたりは今、第八空雷艦隊司令官と、その超キレ者参謀として国民の人気を独占する!暇で平和な護衛任務の日常。しかし、イザヤとクロトと、イザヤの最強警護係ミュウの3人には、余計な催し物が待っている!!艦内プロレス大会だと!?破廉恥な衣装だと!?言語道断である!一方、在ニューヨーク諜報員のユーリは宿敵カイルの懐に決死のダイブ!かくして日之雄とガメリアは、史上最大最悪の三角関係が引き起こす大決戦へと加速していく。

3方面で激動を描きそうな最終巻へと続く。巨砲が決定打となるのか

悲愴感漂う迫力ある太平洋戦争を模した戦記ものを明るくするコメディパートと、自らに課せられた責務と戦いから離れた和む時を過ごしたい皇族と兵士のたゆたう心を描いた4巻だった。 
戦い抜いて生き残り練度が高まった代えがきかない大切な仲間、もといイザヤが言う家族。渋々兵士たちの頼み事を叶えてやってきたクロトも、兵士をパーツから家族へと認識を改めている。皆とバカ騒ぎの余興をやっといての5巻の戦争へと続くのだから、本巻は大戦争の前の休止回であり5巻でより心を揺らす起因となりそうな絆を色濃く描いた話なのかもしれない。生きた家族のままでいられるのか、蹴散らされるのか今後の戦況をみていくと、ユーリがぼやいた「これは無理」の通り、空戦で挑むのは無謀といっていい敵の戦力が登場してきた。太平洋戦争を模した戦記の点でみると、かつての大日本帝国海軍の大艦巨砲主義をガメリアが掲げているようにみえる。浮遊石が漂う浮遊圏がある高度1200mを超えて飛ぶことができない空域において、機敏に動く小型戦闘機が存在しないことで(既刊でいたっけ?)飛行戦艦が戦争の主力となり巨砲がそのまま戦力の象徴となるのだろうか。3巻の最後で飛行艦隊で空を埋めたかと思えば、今度はただ一隻で埋めてしまうような超巨大飛行戦艦登場…加えて日之雄の数倍のスピードで連日製造される飛行戦艦。

局所的な戦いでしのぎを削ってガメリア内でのユーリの活躍で上手く展開を覆すのだろうか。カイルに上手くお近づきになったユーリが、カイルを寂しがり屋でクロトが好きなのではないかと勘ぐっているので、3巻の感想でも書いたけどヴィヴィレインのジェミニを意識してしまう。工作員でハニトラ狙いがヴィヴィレインのエロイサに見えてきた。まあカイルがエロイサの罠にひっかかって下半身で滅びを招いたカミーユのような御し易い人物とは到底思えないのでユーリとカイルの駆け引きも5巻の見どころであり、加えて島での風之宮リオと速夫の敵中突破のでもドラマをうみそうなので、3方面で激動を描きそうな最終巻へと続く。

他に味わい深い戦記を求める人に

硬派戦記「烙印の紋章」「レオ・アッティール伝」を手掛けてきたの著者の新シリーズ。

タイトルで想起される軽やかな筆致の物語ではない。
じんわり温まる小説や心揺さぶられる小説、熱い小説に読んでいれば幾度出会うことはあれど、はじめから最後まで味読ができた上で上記のどれかの小説たり得るものは、電撃文庫でデビューして20年活躍している杉原智則先生の小説が筆頭に挙げられる。面白いシーンで楽しませることも大事だけど小説の本質は、読ませる文章で深い没入感があり、味わい深く読める小説であると思う。物語を形作るのは文章だから。面白い上に味読ができれば、最高な小説に化ける。というのは杉原先生の本を手に取ってパラパラめくれば直感で全体的に文章がぎっしり詰まっていると分かる。とにかく読ませる文章と()のキャラの心の声によるテンポが堪らない。笑みをこぼしたり、ぐんぐんのめり込んだり、ドン!と考えさせられる心境に陥ったりと地の文の多さが魅力にしか映らない小説。会話の勢いでごまかさず、紛れもなく地の文で形作る物語で勝負している小説。
物語は、英雄の1人が災厄を阻止した平定後、敗戦国に立って目のあたりにした事実から自身の正義に問いかけ、悩み、虚飾に満ちた真実にメスを入れる物語。現地に立ってみて体感することは、真実は事実を曇らせるということ。読者の現代に通底するテーマがあり、現実に影響を及ぼす力があるライトノベル。
イラストレーターをかえた2年ぶりの続刊に、作品を追っていた多くの読者が歓声を上げた。

少しでも気になったら、1巻の熱いAmazonレビューの数々をご一読ください!
3巻は2年ぶりの続刊であるにもかかわらず1巻よりも星の数が多いのでファンの方々がどれだけ切望されていたか伝わってくるかのようです。著者はブログやTwitterをやっておらず宣伝は発売時の公式アナウンスだけなので多くの口コミが集まるのはうれしい限り。

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