筺底のエルピス 7 -継続の繋ぎ手- 感想

オキシタケヒコ(著)toi8(イラスト) 2021/2
〇あらすじ〇
殺戮因果連鎖憑依体。古より『鬼』や『悪魔』と呼ばれてきた脅威を狩る、三つのゲート組織が突如とした沈黙した。月に座す異星知性体によって、三体の地上端末すべてが掌握されてしまったのだ。さらに《門部》本部の地下聖域では、阿黍宗佑が第二心臓を埋め込まれ、無敵の刺客として復活しようとしていた。朋之浦結の身柄が彼によって押さえられてしまえば、人類の未来は潰える。断ち切られた希望の糸を繋ぎ直すべく、百刈圭率いる狩人たちはいかに抗うのか。人類の存亡をかけた、影なる戦士たちの一大叙事詩。終焉を拒絶する、反撃の第7弾。

繋いで結束した反撃の始まりと差し出された手の温かさ

前巻がタイトルにあるような四百億の昼と夜という膨大な時間軸の話で明かされた今に至るまでの「縦」と終焉に向かおうとする物語であるなら、7巻はそんな終わりを迎えつつある現状を受け止め共有し、温かな手を繋ぎ結束する「横」と終局に反旗を翻し人類存続の希望という光を灯そうとする物語だった。一冊で濃密な決戦の準備と戦いを描き、戦う人達の心と差し出す手の温かさまでを描く温感ある物語だった。そしてここにきて「筺底のエルピス」の核ともいえる「筺」の広がる可能性にわくわくする。読み手の心を大いに幾度も突き落とそうとも、その物語の興味深いカラクリに心が浮き立つことなんと多いことか。

この物語で一番印象的なのは、旧知の間柄である奥菜と霧島のバトルからのギスランと霧島の共に歩み寄ろうという話の流れだった。 阿黍、奥菜、霧島は門部の古巣メンバーで、既刊で頼れる存在感といかに門部のキーパーソンであったか語られているだけに、今巻で一番濃密な戦いと心の揺れを描くもんだから印象深かった。
頼れる清掃のおばちゃんが、表面上その枠にとどまって門部の最強の守り手である理由…なんでも心を見通してしまうが故に対等に分かり合うことができない苦しみ、自ら思いを断ち切って殻に閉じこもるようなイメージがそのまま停時フィールドとなっているかのような皮肉。相対する立場といえ霧島の心を動かした奥菜と、言葉に裏がない純真な友愛で寄り添うギスラン枢機卿に心を揺さぶられた。心が読めてしまうのが戦闘外でこんなに侘しくても、差し伸べられた手がこんなにも温かいのだと。
「筺底のエルピス」で描かれる凄絶な戦場にギスラン枢機卿は輝かしい。人の善意を信じ、融和をはかって話し合いでよい道を共に探していこうとする。たとえ力尽くでもそうあろうとするし、人を傷つけたくない思いが具現化したような停時フィールドには彼の優しさが表れていて、話し合いの場の用意に寄与しているかのようだ。

諦めを塗りこめるほどの温かさを、いかにして抱き続けることができているのだろう。

P400

阿黍、奥菜、霧島の3人にすうっとギスラン枢機卿が加わって、まるで昔からの友だちかのように語らい食卓を囲むのだろう。実現しそうなので後で4人の食事が見られたらうれしいと思う。

乗っ取られた当主燈と最強の矛である若返った人外の力をもつ阿黍と同じく若返った門部最強の盾の霧島の3人を相手に挑む百刈圭筆頭の反撃組。 異界の自分の力を取り込んで、Iのボスから授けられた力とゲオルギウス会の薬と瞬間移動の支援を受けて立ち向かうのだから3つの組織をまたいだ人類と異星知性体の走狗との戦いともいえるのかもしれない。百刈圭の飛躍がすごくて停時フィールドではない別の「時」の武器に、ここにきてこんな広がりがあるなんて一体他はどんな可能性があるのか。新たな色の仕組みに納得して他の色はどんな事象でどんな意味があるのか。それらが異星知性体に抗う術となるのか、次は最終章の「絶望時空」という不穏そうな「時」の物語に心躍らせつつ。

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